
油絵でもテーマは和風?
今回紹介する絵は、去年の3月にフランスで初めてコロナウィルスによる外出禁止令が出され、自宅でほとんどの時間を過ごしていた時に描いた虎の絵で、テーマとしては少し日本画的な絵です。
普通に日常を過ごしていたある日、突然ものすごい勢いで広まって深刻な事態に発展してしまったコロナウィルスの問題で一時はどうなってしまうのかと思いましたが、お給料が保証された上での自宅待機命令だったので、とりあえずは生活が滞ってしまうことはないし1人で暗い気持ちになっていても仕方がないので、すぐに気を取り直して自分の時間を充実させるべきだと思いました。
絵ももちろん進めるつもりでいましたが、その他にも健康をこれから維持していくための筋力トレーニングであったり、僕はインターネットに対して正直疎いので、出来ることとしてこのブログを始めたり、普段興味があってもなかなか取り組むことができなかったことをやってみようと思ったのです。
僕は基本的には油絵の具以外の画材を使って絵を描くということはほとんどありませんでした。 ただデジタルでも多少のイラストくらいは気軽に描けたらなあ、と思っていたこともあり小さなペン・タブレットを購入して試し描きをしてみたりもしました。
ただやはり実際に自分で絵筆を持って描く感覚とは違うので難しく、まだまだ人様にみてもらえるようなものが描けるようになるまでには少し時間がかかりそうなので、何かデジタルでおもしろい絵が描けたらまた追って紹介したいと思います。
アイデンティティ
日本に住んでいた時には自分が日本人である、ということに対して深く考えたことはなかったように思いますが、パリに移り住んでからは国籍を聞かれたり、あるいは街で何か日本の催し物の広告などを見つけた時に妙に嬉しい気持ちになったりと、自分が日本人であるということに対してやはりとても強く意識するようになりました。
そうしたことをきっかけに、日本にいた頃とは絵のスタイルも変わってきたと思います。
ただまあ勝手に変わってきたというよりは自分自身の最も『しっくりくる』スタイルを探して探求してきたということはやはりありますね。
そして例えば風景や人物を描いても、フランス的なテーマの絵であっても、日本的なテーマの絵であっても、自分の色で絵が描けたらなあという強い思いもありました。
何かを制作、クリエイトするということは、満足してそこで終わりということはきっとないのではと思いますがここ数年くらいでなんとなくではありますが、自分自身で描いた絵を、昔よりも好きになったようになった気がしています。
制作過程
制作過程 1、2
桜に虎 1 桜に虎 2
それでは制作過程の紹介です。
ここ最近の傾向としてですが、あまり資料を前もって調べたり見過ぎないようにしています。 というのも、いつも思うのですが一番初めに肩の力を抜いてサラッと描いたような絵が、結局いちばん表現したい絵であることが多いような気がするからです。
ということで細かいディティールにはこだわらずにキャンバスに収まりが良いように油絵の具で直接虎の輪郭を描き出します。
そして後半、見せ場である虎の黄色と黒、そして白が映えることを意識して色を乗せていきます。
制作過程 3、4
桜に虎 3 桜に虎 4
大体虎の形が出来てきたので今度は背景に桜の木々を描いていきますが、あくまで絵の主役となるのは虎なので、後ろから虎を引き立ててくれるようなタッチで優しく描きます。
桜の花びらも描き込んでいきます。 『ちょっと現実には考えにくい』かな、というようなシチュエーションや少し極端な表現でも絵ならむしろその方が面白くなることが多いので細かいことは気にせずに描き進めます。
制作過程 5、6
桜に虎 5 桜に虎 6
背景にリズムよく草木を描いていくため、虎にマスキングテープを施して少しずつ明るめの色にしていきます。 この時に前半で置いた少し暗めの色が後から置く色を引き立ててくれるのです。
写真の数が多くなり過ぎてしまうので割愛しましたが、今回は虎にマスキングを2度施しました。
つまりは1度マスキングをして背景を描き進め、マスキングを剥がして今度は虎を描き進める、ということを2回したということですね。
マスキングは『油絵』に関して言えばあまり一般的ではありませんが、比較的僕の油絵の具の使い方がサラッとしていて指触乾燥(字の如く触れても指につかなくなるくらい絵の具が乾いてきた時です。)が早めなので制作のリズムを止めることなく使えるので好んで使っているところもあります。
仕上がり間近

少しくすんだような色合いで、ほぼ全体的に仕上がり間近の状態です。
縞模様の黄色い色が背中側からお腹側にかけてグラデーションしているところは、虎の美しい模様を引き立てる見せ場であると同時に描きごたえのある部分でもあります。
桜の木、そして花びらにも最終的な色を乗せていけば、いよいよ最終段階です。
完成

『虎に桜』 65×54cm キャンバスに油彩 2020度作
初めに想定していたよりも随分と時間がかかってしまいましたがなんとか完成です!。
迫力のある、というよりは、ちょっとおっとりしたぬいぐるみのような虎になりましたが、描いていてとても楽しい絵でした。
コロナが終息したら久しぶりに展覧会がしたいな、と思っていますがそれにもやっぱりもうしばらくの辛抱が必要になりそうですから、その時までにもう少し絵を描き溜めておこうと思います。
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