コロナウィルス 6

旧市街への入り口 Cordes-sur-Ciel
旧市街への入り口 Cordes-sur-Ciel

夏のバカンス ブルゴーニュの小さな田舎町 Tannay (タネー)へ。

一昨年の夏以来、2年ぶりにフランクの実家があるブルゴーニュの小さな田舎町、タネー(Tannay)を訪れてきました。 

フランクはかつて僕がオテル・リッツで働いていた時の同僚で、その時以来、もう10年来の付き合いになるとても親しい友達です。

オテル・リッツの大改装を機にパリを離れ、それ以来スイスのジュネーブにある大きなホテルで総料理長として働きだしてからもう8年になるフランクですが、帰郷するタイミングと僕の長期休暇のタイミングが合うとその度にタネーに招いてくれるのです。

朝は早く起きて川へ釣りをしに行ったり、そうでなければゆっくりと寝ている時もあります。 午後にもなれば近所に住む友達も交えてビールを片手に広場でペタンクをしたり、普段の都会の慌しい生活をひと時のあいだ忘れて、のんびりとした時間を過ごします。 

ペタンク(Pétanque)南フランス発祥のゲームで、まず1人から3人でチームを作り、目標になるカラフルに塗られた小さな木の球の付近へ700グラム前後の鉄球を投げて点を競い合うゲームです。 持ち手の鉄球を全て投げ終わった時点で目標の一番近いところに鉄球がある方に点数が加算され、13点先取で勝ちが決まるというシンプルなゲームですが、時に相手の球を退かすように狙い撃ちをしたりと戦略性があって面白い上、年齢層も関係なく子供からお年寄りまで誰でも出来るので、とても多くの人たちに親しまれています。 

タネーは人口500人から600人の、外を歩けば知っている人ばかりという小さな町で、都会にしか住んだことがない僕からすれば、いつかこんな静かなところでのんびり暮らすのもいいのかなあ、なんて考えさせられるような長閑なところです。

晴れた夜には、空一面見渡す限りのたくさんの星を見ることが出来るので、初めて見た時には、「こんなにもたくさんの星が見えるのか」ととても感動しました。 都会で生活していると、夜でも明るいし忙しいのも相まって、普段僕らがたくさんの星の下で生きていることなんて、つい忘れてしまいがちですからね。。 

ガヤック(Gaillac)へ。

タネーで数日過ごした後、フランク、そしてフランクの兄のファブリースと3人で一路南西トゥールーズから50キロほどのところにあるガヤック(Gaillac)へ。 フランクの自動車でタネーからは約600キロの移動です。

ガヤックにはフランクがブルゴーニュで研修生時代に働いていたレストランのシェフ、フィリップが住んでいて、彼の家で数日を過ごすために訪れるのが目的です。 フィリップは膝の故障から、もうだいぶ前に料理の世界からは離れて今はネクタイを締めて別の仕事をしていますが、フランクがまだ10代の半ばの頃に一緒に働いた時から今に至るまで、彼らは良き友人でいるのです。 

僕ももうこうしてフィリップの家でフランク達と夏のヴァカンスを過ごすのは3回目になるのでもうすっかり慣れた気分で、みんなでプールのある庭でバーベキューをしたり、カードゲームをしたり、付近の街を訪れたりと、なんともフランスの夏休みらしい時間を過ごします。

こうした以前にもあったフランク達との同じような夏のバカンス。。 

ですが、どうしても今までにはなかった違和感が漂います。。

逃げられないコロナの脅威

バカンスを過ごしている間にも、フランクの携帯電話には頻繁にジュネーブのホテルから電話がかかり、その度にフランクは指示を出したりしているのですが、内容の多くはあまりポジティブなものではありません。。

ホテル業界へのコロナウィルスの影響は大きく、普段見込めているお客さんの数には全く及ばないという理由からジュネーブのホテル内のレストランは閉鎖してしまっている状態なのです。。

こうしてバカンスを過ごしていてもやっぱりフランクは口数も笑顔もいつもよりだいぶ少なく、どこか心が落ち着かないといった感じです。 そしてもちろん僕自身もパリで同じ業界で働いているので将来的な不安は拭えずにいます。。

毎日世界中の国々でコロナウィルスによる感染者や亡くなってしまった人達の人数を報じていますが、そこから来る経済的ダメージはそれと同等、あるいはそれ以上に大きく、うまくリモートワークに切り替えが出来ない僕らのような業界が受けるダメージは、これからさらに真綿で首を絞めるようにゆっくりと厳しいものになっていくはずです。

パリやジュネーブのホテル利用者の多くは海外からの旅行者ですし、今の状況からの業界内の推測では向こう少なくとも5年間は営業状態が元へ戻ることは無いだろうと言われています。

コロナの問題の最も大きなところは、生活する街を変えようと、住む国を変えようと、世界中で起こっていて逃げ場がどこにもないということと、もう一つはいつ改善に向かうのか、未だ全くもって見通しが立っていないということです。 

世界中の専門家ですら手も足も出ないコロナウィルスを、ましてや一般人の僕らが個人的にどうにか出来るはずもありませんし、これからさらに人々へのストレスも募り続けていくことになるでしょう。。

不幸中の幸いとしてフランスでは万が一、解雇に至ってしまったとしても、しばらくの間は失業手当てが出るので、今日明日にでも路頭に迷うという心配はありませんが、だからといってただ時間が過ぎるのを見過ごしてくというのでは、事態は何も改善しません。。

そして同時に押し寄せるIT化の波

何より失念してしまってはいけないのが、コロナの問題だけでも計り知れないくらい大きいのに、それに加えて、さらにこれからIT化や自動化運転などによる仕事の環境変化が拍車をかけて大きくなるということです。

IT業界に身を置く人たちや、このコロナの状況を上手く逆手に取って仕事がうまくいっている人たちにとってみれば、むしろ発展することができるチャンスとも言えますが、そうではない一般的な仕事に就いている多くの人たちにとっては、何もせずに指を加えていれば、仕事の状況はこれからどんどん悪くなっていく一方でしょうし、貧しい人ほどさらに失業者になる危険が高くなるということは避けられません。。

そうしたことがすでに予想されていますが、問題は、ほとんどの人はこれから来るこうした近い未来に対して何の準備もしていないどころか気付いてもいないということにあります。 

たとえば自動車やトラックが無人で動く技術が今日現在すでにあるのにもかかわらず、まるで我関せずと言わんばかりに注意を向けることなく日常を普段通りに過ごしているドライバーを生業としている人がいたとしたら、ある時、気が付いた時には時代の波に飲まれてしまって自分の居場所を失ってしまうことになりかねませんし、そういう僕自身だって未来に対して今は何も確かなものなど持っていません。。

現在はピザを買うのだってタッチパネルでトッピングを選べば、全て作ってくれて、焼きあがれば切り分けて箱に入れ、袋にまで詰めてくれるロボットが開発されていますし、アメリカではスマートフォンなどでのID確認後に商品をもってレジに並ばずとも、直接ゲートを通り抜けるだけで自動でスキャンして口座から買った分の金額が引き落とされるお店(Amazon Go)なんかもすでに3年以上前から実用化されています。

これから考えなければならないこと

今、僕たち感情を持った生身の人間だからこそ出来る事とは一体何なのかが、改めて問われているような気がします。 

それには今、世の中で常識とされていることひとつひとつに今一度目を向け、自分自身で疑問を抱き、そして考えることが、まず何より大きな第一歩になるはずだと僕は思います。

僕らは普段どこかで「ん?何だかおかしいな」と思うことがあっても、周りの人たちに、それがここでは普通だと言われれば、自分の中に芽生えた違和感を、どうしても押し殺してしまいがちです。 

ですが人間として自然に湧き上がる感情や違和感を、今だからこそ大切にしなくてはいけません。

なぜならそうした自然に湧き上がる感情こそ、未来を良くしていくための指標であり、ヒントであると思うからです。

そして同時にそれは、時にどうしてもどこかに敵を作ってしまう状況になろうとも、自分の信念を強く貫くくらいの勇気を持たなければいけないということでもあります。 

そうすればきっと、これからどんな難局を迎えることになったとしても必ず切り抜けられるはずだと信じて僕も前へと進もうと思います。

そして全ての人たちが幸せであり続けられる楽園なんてできなくても、せめて不幸になる人たちのできる限り少ない平和な世の中であって欲しいと思います。

1年後、2年後、そして3年後。。

たとえどんなにゆっくりでも、みんなが前へと進んでいける未来でありますように。。

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