思い出のシーザーサラダ。

バターヘッドレタス。  Laitue Butterhead
バターヘッドレタス。 Laitue Butterhead

定番の『美味しい』は、ずっと使える。

思い返すと時が経つのは早く、もう10年も前のことになりますが、縁あってパリのオテル・リッツ・パリ『Hôtel Ritz Paris』に就職したときの話です。 

普通履歴書を出したとしても、なかなか面接にも至らないというのが当たり前なくらい有名なホテルに、どうして僕が働くという話になったかというと、それは友人からの誘いによるものでした。 

ある時、「大ちゃん、お寿司作れるよね?リッツが人探してるんだけれど興味ない?」と声をかけられたのですが、当時はキッチン3人、サービス2人の20席ほどの小さなフレンチのお店でシェフとして働いていた僕は、世界的に有名なホテルで自分が働くなどということは全く考えたこともなかったので、誘われた当初はやはり気持ち的に少し躊躇しました。 

リッツといえば世界中にあるリッツ・カールトンホテルを思い浮かべる人も多いと思いますが、パリのリッツは1898年創業以来単独経営の唯一無二の伝統あるホテルで、晩年のココ・シャネルや文豪アーネスト・ヘミングウェイが住んだホテルです。 最も新しい記憶ではイギリスのダイアナ王妃が亡くなる直前に宿泊していたことでも知られています。

ですが何より特筆するのはフランス料理が今の形になる原型が作られたのがパリのオテル・リッツだということです。 リッツの初代総料理長オーギュスト・エスコフィエ(1846〜1935)がフランス料理をまとめた本、『Le guide culinaire』ル・ギドゥ・キュリネール(料理の手引き)は今でもフランス料理の基本ソースなどを振り返る時には現役シェフ達に読み返されていますし、現在のように前菜、主菜、デザートとフランス料理の基本の3皿構成の形態が初めて作られた場所でもあります。(それ以前は同時にたくさんの料理が卓上に運ばれていました。)

ちなみにですが、前菜、主菜、デザートという観念は、家庭でも、学校の給食でも根付いていて、よく日本で誤解されがちな、『何枚ものお皿が次々に運ばれてくる』と言うのはフランスでは『Menu Dégustation』ムニュ・デギュスタシオン(だいたい8皿前後で小さい盛り付けのお皿が順番に出てきていろんな味を楽しめるという趣向のメニュー)といって特別なメニューなので、基本的には高級で敷居の高いレストランにおいても同様に、前菜の前にいくつか突き出しのように何かが出されることはあっても料理自体は3枚構成というのがフランス料理の基本です。

と、少し話は外れましたが、僕は「やるだけやってみよう」と開き直り、持っている服の中から一番『まとも』なものを選んで、人事担当、総料理長とディレクターの3人の面接を受けました。 

面接は無事終了し、後日その時働いていた小さなお店の小さなキッチンで、営業後にひとり明け方の4時過ぎまでかかって数品の料理の試作を作り、数時間の仮眠をして翌日リッツのとてつもなく大きなキッチンの片隅を借りて仕上げと盛り付けをして、当時の総料理長ミッシェル・ロット、レストラン・ディレクター、そしてホテルのディレクターの3人に試食をしてもらい、無事働くに至ったのです。 

お給料は大して高いものではありませんでしたが何より個人店と違うのは、大きなホテルは組織としてやはり規則は守るので、しっかりとタームカードもあって労働時間がちゃんと守られているという事が「ああ、これでまた絵を描く時間が持てる」と、何よりその時の僕にとっては魅力的でした。 

リッツにはその後訪れる4年にも及ぶ大改装を跨いで足掛け7年ものあいだ働いていたので、色々と綴りたいこともありますが、長い話になることは間違い無いので、それはまた別の機会に改めて書くとして、今日は完全再現ではありませんが、当時リッツの定番メニューとしてあったシーザーサラダ(Salade César)を少し思い出に浸りながら作ってみたいと思います。

当時のリッツで出されていたのは、ロメインレタスにシーザーサラダのソースで味付けをして、薄くスライスしたパルミジャーノチーズと、クルトンとして長いクラッカーを一本乗せただけのナチュラル・シーザーサラダ、そこに皮目を香ばしく焼いた鶏の胸肉が乗ったチキン・シーザー、そしてポワレしたエビが乗ったシュリンプ・シーザーでした。

鶏肉かエビが乗る以外は同じ盛り付けだったので非常にシンプルなものでしたが、大きなリモージュ焼きのお皿にフワッと大きく盛り付けられたリッツのシーザーサラダは壮観で、それ以上何も足すものも引くものもない、まさに完成されたお皿で、当時のリッツの基本のメニューとしてまさに何年ものあいだ長期にわたって出されていたメニューです。

2〜3日おきに3リットル以上もまとめて作っていたほど消費量が多かったので、当時のレシピをそのままというのは個人で作るには非常に使いにくいので、要点をまとめながら誰もが作りやすく、自分だけのオリジナレシピが作れるように、アレンジも加えつつ紹介できたらと思います。 

主なシーザーサラダのソースの材料

ソースの主な材料。
ソースの主な材料。

マヨネーズ 当時のリッツでは、コーン油とシェリーヴィネガーをベースに立てた自家製マヨネーズを軸にシーザーサラダのソースを作っていましたが、わざわざ自分でマヨネーズを立てるまでもないので市販のもので充分です。 

実際にはまだ作ったことがありませんが、日本のキューピーマヨネーズで作ったら美味しそうな気がします。

パルメザンチーズ 贅沢をいえばやはりパルミジャーノ・レッジャーノチーズを削って入れたいところですが、普通のパルメザンでももちろん、粉チーズでも充分代用できます。

アンチョビ 塩漬けにされた後、油に浸して保存できるようにされたカタクチイワシ科の小魚で、ピザの上にもよく乗っていたり、パスタにも使ったりします。 

ものによってびっくりするくらい塩っぱいものがあったり、浸す油が違ったりと加工のされ方によって色々なものがありますが、やはりしっかり塩漬けされたものの方がソースにはよく合います。 

ケッパー ピクルスになって瓶に入っているものが一般的です。 個性が強く、苦手な人も多いですが、慣れるとパスタのソースやアクセントなどいろんなものに利用することができます。 好みによって量を加減するといいでしょう。

ニンニク 細かく微塵切りにしてもいいですし、擦って入れても良いです。 でなければ非常に便利なのでパウダーのものを使うのも手です。 いずれにしてもニンニクはしっかりと効かせる量を入れた方がシーザーサラダは美味しいです。

胡椒 普通の胡椒で構いませんが、できたら少し粗めのものの方がいいかもしれません。

ヴィネグレット) クラシックなフレンチドレッシングですね。 リッツでは別で作り置きしておいたヴィネグレットをマヨネーズに対して半分(マヨネーズが100mlならヴィネグレット50ml)入れていたのですが、固さの調整目的というのが大きく、使われている材料もかなり重複するので今回は省きます。

まさに主張の強いものばかりですが、材料の個性を仲違いすることなく活かし、それぞれがそれぞれの味を引き立て合うような割合をうまく見つければ、つい誰かを家に招きたくなるような、最高に美味しいシーザーサラダのソースが。

アンチョビ、ケッパー、ニンニクを細かく刻みました。
アンチョビ、ケッパー、ニンニクを細かく刻みました。

もしもフードプロセッサーがあれば、全て放り込んで回すだけで良いですし、ソースもきめ細かくクリーミーに仕上がります。 

なければ少々まな板を汚しますが、大した手間でもないので包丁でアンチョビ、ケッパー、そしてニンニクをそれぞれ細かく刻みます。 あるいはわざと粗みじん切りにして食感を楽しむのも悪くありません。

材料を混ぜ合わせます。

ボールにソースの材料を全て入れて混ぜます。
ボールにソースの材料を全て入れて混ぜます。

全ての材料をボールに入れ、胡椒も充分に効くくらいの量をしっかりと入れます。 

混ぜ合わせるとこってりとしています。
混ぜ合わせるとこってりとしています。

混ぜ合わせていくとペースト状になってきました。 ここで味見をして全体的なバランスを見ます。 酸味がもう少し欲しいようであれば少しシェリービネガーを足したり、アクセントに辛みが欲しければマスタードを少し足しても良いしょう。

そして塩加減ですが、アンチョビに含まれている塩分によってはもう塩加減は充分という場合があるので、様子をみてアンチョビの量を加減します。 足りなければ少し塩を足します。

ソースが完成。

水で適度な固さに希釈します。
水で適度な固さに希釈します。

シーザーサラダのソースの味がバランスよく出来たら、今度はサラダに最も馴染みやすい固さに希釈にますが、ここではバランス良くできたソースの比率を動かさないよう油やお酢は使わず少量ので希釈します。 

スプーンを使ったりしながら少しずつ様子を見ながら水を足して緩め、そうしてちょうど良い固さになればソースはついに完成です。

参考までに今回僕が使ったものは、マヨネーズ100グラム、マスタード少々、パルメザンチーズ30グラム、(リッツのレシピはマヨネーズ1リットルに対して40グラムほどしか入らないですが、後から薄く切ったパルミジャーノを乗せていたので、最後に別でチーズを乗せないのであればかなり多めに入れても大丈夫です。)ケッパー15グラム、ニンニク4分の1片、アンチョビ2尾(今回はたまたま持っていた缶詰の日の通ったものを使いましたがやはり塩と油に使っているものの方をお勧めします。)胡椒少々、塩少々です。

自分好みのソースが完成したら、レシピに書き起こして自分だけの『セザールサラダのレシピ』として、ぜひ夕食の前菜にしてみてはいかがでしょうか?

ソースと満遍なく絡むことを意識して混ぜます。
ソースと満遍なく絡むことを意識して混ぜます。

今回僕はバターヘッドレタスに少しキュウリも使いましたが、普通のレタスやロメインレタスなど(リッツではロメインレタスでした。)好きなサラダの葉を選んだら、ボールの中で満遍なくソースに絡むように、手でフワッと葉を潰さないようやさしく混ぜ合わせます。

ここで一つ注意点ですが、美味しいサラダソースやドレッシングを作っても水っぽくなってしまったらせっかくのサラダが台無しですので、サラダは洗った後、必ずできるだけ水を切るようにしましょう。 もしもサラダスピナーがあれば言うことなしです。  

逆にいえば冷たい水で洗ったサラダをしっかりと水切りすれば、それだけでサラダが格段に美味しくなるのでこの一手間だけは決して惜しまないで下さい。

盛り付け

鶏肉にラディッシュ、クルトンを乗せて。
鶏肉にラディッシュ、クルトンを乗せて。

『チキン・シーザーサラダ』

以前紹介した低温調理 鶏胸肉のサラダで使った、鶏肉の周りだけを香ばしく焼いて切ったものと、ラディッシュ、シリアルの入ったパンをカリカリに焼いてクルトンにしました。 

クルトンのカリカリの食感は、サラダに入っているととても面白いのでとてもお勧めですが、リッツのようにクラッカーを乗せるのもまた一興です。

最後にもう少しパルメザンチーズを足したら、さあ、いよいよ完成です!!。 

ボナペティ!。

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